Willis & Geiger

Willis & Geigerというブランドに出逢ったのは、私がまだ学生時代の90年代半ばだったと思う。たまたま訪れた古着屋さんで手にしたのが「ヘミングウェイ・ジャケット」だった。

当時、既に20年近く経っていたのではないだろうか。そのくたびれて埃っぽいジャケットを見たときの強烈な印象が忘れられない。歴史を纏う「本物」の洋服が持つ存在感がそこにありました。

 

あれから30年。

 

この度、期せずしてSHIPSさんから「サファリ・ジャケット再生」の依頼が来たのだ。依頼内容は、ディテールの抽出は正確に。クラシックから現代的なフォルムへと生まれ変わらせること。

 

「歴史」に対する挑戦がここにあります。

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まずは素材の分析から。本家は「340 Cotton Bush Poplin」と呼ばれる高密度コットンの平織り生地を使用しています。設計の詳細は割愛いたしますが、汗の発散による着用時の爽やかさや、天候に対する機能面などに優れた素材は、同社が開発したアウトドア・ファブリックです。

 

これに対し、我々はアプローチを同一としながらも、最新の革新織機を用いて「超高密度」に織り上げた「Ventile」を使用しています。より撚糸回数を増やし、限界に達する糸の打ち込み本数で、アウトドアに対する機能性の向上に加え、副産物として美しい表面光沢を手にしました。このことで、従来のアウトドア用途に加えて、都会的にモダンな着こなしにも対応できるジャケットとなったのです。

 

当時の製品を見ると、カジュアルジャケットではありますが、縫製の細かさや設計の緻密さを見て取れました。しかしパターンの設計はあくまでもカジュアルです。

私は、この製品の設計ポイントは、衿と袖にあると感じました。
ラペルジャケットに近い精度で設計がなされた衿は、しっかりとキマるので、その佇まいは大人びるものです。次に、迫力のある袖のボリューム。これは動作を妨げないために必要な運動量の確保と同時に、このジャケットの「男らしさ」を決定的なものにしていると思いました。

 

それらを踏まえた上で、本作には「肩まわり」にもラペルジャケットの設計を取り入れています。立体的な構造にするためです。このことで着用感はより軽やかなものへと進化しました。同時に、全体的なリバランスを行い、この商品は「再生」されたのです。

 

 

本家サファリ・ジャケットが現存するように、いつの時代にも廃れない「本物」が存在します。今回、制作させていただいたサファリ・ジャケットもその血筋と言えます。

古き良きものが、時代の流れに合わせて変化することは必然といえるのではないでしょうか。

本作には現代の日本の技術が色濃く投影されています。このジャケットが時と共に味わいを増し、末長くお客様に愛されることを祈っています。

 

最後になりますが、この企画にご賛同いただいた多くの企業の皆様、そして貴重な経験をさせていただいた株式会社シップスのご担当者様、本当にありがとうございました。この場を借りてお礼を言わせていただきます。